大企業の母体となる商号、一般人の商標出願は登録拒絶
-特許法院2021.7.6.宣告2020ホ2192 登録無効(商)判決
韓国著名な大企業であるLGグループは、創業者である(故)ク・インフェ(具仁會)会長が最初に事業を始めた“クインフェサンジョム(具仁會商店)”を母体としている。しかし、2018年7月頃、(故)ク・インフェ会長の氏名を含む“クインフェサンジョム”が、綿織物小売業などを指定サービス業として商標出願された。出願された商標は、(故)ク・インフェ会長の漢字氏名も同一に構成されたものである。
本件出願商標 |
先使用商標 |
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韓国特許庁及び特許審判員は、該当出願商標に対し、故人の名誉を毀損する恐れがあり、LGグループと関連したものと出処の誤認・混同を招く恐れがあるという理由で登録を拒絶した。これに対して出願人が不服し、特許法院に審決取消訴訟を提起したが、特許法院も本件出願商標は商標の出願登録の過程に社会的妥当性が顕著に欠如しており、その登録を認定することは商業法の秩序に反するものなので容認できないと判断した。特許法院は、LGグループと関連のない出願人が、(故)ク・インフェ会長が営為した事業に関する先使用商標を模倣して本事件出願商標を独占的に使用する意図で無断で出願・登録する行為は、結局のところ、著名な故人であるLGグループの創業者ク・インフェと関連のあるものと消費者を誤解させるか、故人に対する追慕を妨害するなどの方法で著名な(故)ク・インフェの名声を低下させ名誉を毀損する恐れがあり、一般人の通常の道徳観念である善良な風俗に反するだけでなく、著名な故人の氏名や著名が使用した商号の名称に便乗して需要者の購買を不公正に吸引しようとするものであって、公正な商品流通の秩序や商道徳などの善良な風俗を害する恐れがあるとみなした。
また、特許法院は、先使用標章の権利者は個人や個別企業だけでなくそれらの集合体である社会的実体にもなり得るという点を確認しつつ、当該事件の審決の時点においても先使用商標は一般需要者が取引者に(故)ク・インフェの事業を承継したLGグループと関連のある標章と認識され得るので、当該事件の出願商標が使用されると、当該標章は一般需要者や取引者にとって、(故)ク・インフェの事業を承継したLGグループと関連した標章と認識されることにより、商品の出所に対する誤認・混同を誘発し、一般需要者を欺瞞する恐れがあるとみなすべきだと判断した。
このような特許法院の判決により、第3者が出願した大企業または著名な故人と関連した商品に対する審査がより厳しくなることが期待される。
一方、本件出願商標を出願した者は、別の大規模企業集団であるHyundai Groupの(故)チョン・ジュヨン元名誉会長が初めて勤務した米屋‘복흥상회(ボックフンサンフェ)’、初事業場であった‘경일상회(キョンイルサンフェ)’、Hyoundai自動車の起源となった整備所‘아도서비스(アドサービス)’;木材所であってDAELIMグループの母体である‘부림상회(ブリンサンフェ)’、DOOSANグループの始まりであった‘박승직상점(ボックスンジック商店)’;KAKAOの母体である‘아이위랩(IWILAB)’などに対し、商標を出願して登録を受けていた。しかし、今回の特許法院の判決により、そのように既に第3者により登録された大企業または著名な故人関連の商標に無効事由があることが確認されたものといえるので、登録権者がこれらの登録商標を使用したり、これらの登録商標に対して権利行使をした場合、不正競争行為及び権利乱用に該当するものと考えられる。