(1)特許法一部改正案-特許料返還請求期間の延長
特許庁長又は特許審判院長は特許料及び手数料が過・誤納付された場合には、現行法その事実を納付した者に通知し、納付した者の請求によりそれを返還するが、返還請求は通知を受けた日から3年が経過すると不可能としていた。
しかし、特許庁が特許料などに対する返還通知をしても返還請求期間を守れないなどの事由により、対象特許料の返還を受けていない事例が多発している実情である。
特許料及び手数料を納付した者の権利を確実に保護するために、特許料及び手数料の返還請求期間が現行の3年から5年へと延長し、当該改正法は2022年10月18日より施行されている。
ただし、上記規定は2022年10月18日前に従前の規定によって3年の返還請求期間が経過した特許料と手数料に対しては適用されない。
(2)特許法施行令一部改正案-優先審査対象拡大
特許法施行令第9条第1項は、優先審査の対象となる特許出願を規定している。韓国特許庁は先端産業の競争力を確保するために半導体など先端技術と関連した特許出願は、他の特許出願より優先に審査できる様、特許法施行令第9条第1項の一部を改正した。
これにより、半導体など国民経済及び国家競争力の強化に重要な先端技術と関連した特許出願(特許庁長が優先審査の具体的な対象と申請期間を定めて公告する特許出願に限定)も優先審査の対象に編入され、改正施行令は2022年11月1日より施行されている。
(3) メタバース関連商標の動向
メタバースは超越を意味するメタ(meta)と現実世界を意味するユニバース(universe)の合成語であり、3次元の仮想世界を意味する。今まではゲーム会社と手を取合ってハイブランドのロゴが使われた服を着た仮想キャラクターを作る試みのレベルであったが、今では未来の‘売上げ’とつながり得る具体的な行動を取り始めた。
グローバルスポーツブランドナイキは、米国特許庁にオンライン商標登録を申請した。仮想世界でアバターが着用できるシューズと衣類に対する商標権であり、ナイキのロゴを含み‘Just Do it’、‘エアジョーダン’、‘ジャンプマン’など、計7つが含まれた。
※出処:中央日報(https://www。joongang。co。kr/)
また、米国のファストフード企業のマクドナルドは、仮想レストラン、カフェ、コンサート、その他の仮想サービス及び商品と関連した12件以上の商標出願を提出した。また、仮想食品及び飲料関連製品、芸術作品、テキスト、オーディオ及びビデオファイル並びにNFTを含むダウンロード可能なマルチメディアファイルに対する商標権も申請した。マクドナルドは、メタバース商標出願においてマックカフェ(McCafe)ブランドに対しても同じ内容の商標権申請を行ったと伝えた。
※出処:ブロックチェーントゥデイ(http://www。blockchaintoday。co。kr)
韓国特許庁は、このような近年の市場状況を反映し、国内で関連の商標出願が増加*するに伴い「仮想商品の審査指針」を設け、2022年7月14日から施行した。
*(’10~’19年)20件→ (’20年)6件 →(’21年)17件 →(’22年5月)717件
※出処:韓国特許庁
審査指針によると、以前は‘ダウンロード可能なイメージファイル(仮想衣類)’、‘仮想衣類が記録されたコンピュータプログラム(仮想商品)’などの形態のみ商品名称として認められたが、‘仮想衣類’、‘仮想シューズ’など、‘仮想+現実商品’の形態となった名称も認め、出願人の商品名称の選択範囲を拡大した。
すなわち、仮想商品をイメージファイル又はコンピュータプログラムと類似した商品に分類していたことを、イメージファイルなどとは区別される別の商品群に分類し、仮想商品も現実商品の性質を反映して細部的に区分するようにした。これにより、仮想空間での商標紛争の発生を防止し、商標選択の範囲が過度に縮小する問題点を解消するものと見られる。
区分 |
商品類 |
出願商品(例示) |
名称認定の如何 |
1 |
9 |
ダウンロード可能な仮想商品 |
不認定 |
2 |
9 |
仮想商品が記録されたコンピュータープログラム |
不認定 |
3 |
9 |
仮想衣類 |
認定 |
4 |
9 |
仮想製品、すなわちオンライン仮想世界で使用するシューズ |
認定 |
5 |
9 |
ダウンロード可能な仮想衣類 |
認定 |
6 |
35 |
ダウンロード可能な仮想衣類小売業 |
認定 |
<商品名称の認定判断の例示>
※出処:特許庁
また、仮想商品と現実商品は原則的に互いに類似しない商品とみなして審査することになる。
仮想商品は、現実商品の名称及び主要外観など一部の要素を含めて表現しており、類似した商品であるという一部の主張があるが、仮想商品と現実商品は使用目的と販売経路などが異なり、原則として消費者の混同可能性は低いとみなす。
ただし、有名な商標などと類似した商標が出願された場合、該当有名商標などと混同可能性があるか否かを審査することになる。
区分 |
商標 |
|
商標 |
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現実商品 |
自動車 |
シューズ |
仮想商品 |
仮想自動車 |
仮想シューズ |
類似の如何 |
現実・仮想商品共に非類似と判断 |
<仮想商品の類似判断例>
※出処:特許情報検索サービス(http://www.kipris.or.kr/)(資料提供=韓国特許庁)
今後、仮想・拡張現実技術の発達によりメタバースプラットホームなど多様な超連結新商品がグローバル市場を主導していくと予想され、仮想商品と現実商品間の類似性の判断に関する明確な基準がなかった状況で、仮想商品と現実商品は原則として非類似であると判断するというガイドラインが提示されたことから、仮想商品と関連した知的財産権を優先して確保する努力が必要であると言える。