韓国大法院は、2022年に、原出願時では請求範囲が自己公示した内容と関係がなかったため公知例外主張を行わなかったが、分割出願時に請求範囲が自己公示した内容に含まれている場合、原出願時に公知例外主張を行わなかったとしても分割出願時に公知例外主張を行うべき実質的な必要性があるという点等を根拠に、「原出願で公知例外主張を行わなかったとしても、分割出願において適法な手続を遵守して公知例外主張を行ったならば、原出願が自己公示日から12ヶ月以内になされた以上、公知例外の効果が認められ得る」と判示した。(大法院2022.8.31.宣告2020フ11479判決)
しかし、この判決以降も、実務においては、①特許拒絶決定に対する審判請求が棄却された場合、拒絶されていない請求項等の一定の範囲内で、その特許出願の一部を分離し、新たに特許出願することができる「分離出願」(特許法第52条の2)、及び、②最初の出願の範囲内で同一性を維持しつつ特許と実用新案との間の形式のみを変更して出願する「変更出願」(特許法第53条、実用新案法第10条)の場合にも、このような法理を同様に適用できるか否か、③「国内優先権主張」(特許法第55条)と関連して、原出願時に優先権主張がなかったにも拘わらず、分割出願時に優先権主張をして優先権の認定を受けることができるか否かに関する論議が続けられてきた。
韓国特許庁では、このような論難を解決するために2023年3月審査基準を改正し、上記大法院の判決で判示した分割出願の他にも、分離出願、変更出願、国内優先権主張出願の場合まで、公知例外の主張に関して上記判示を拡大し適用できるようにすることで出願人の発明者としての権利を実効的に保護できるようにした。すなわち、原出願で公知例外の主張を行わなかったとしても分離出願、変更出願又は国内優先権主張出願において適法な手続を遵守し公知例外の主張をしたならば、公知例外の効果が認められるようにしたのである。ただし、原出願時に優先権主張をしなかった場合、分割出願時に優先権主張をすることは依然として認められないとし、この部分の審査基準は変更されなかった。このように改正された審査基準は、今後の特許出願及び特許調査分析の実務に大きな影響を与え得るので、留意する必要があると見られる。